巧みなブログ

国語教育を勉強していた社会人一年目のブログ

部活動(もしくは顧問)は廃止すべきか

何となく、しばらくしたら部活動問題が流行る気がするので先取りして書いてみようと思います。ぜひ自分の部活体験と照らし合わせながら読んでみてください。今季のテーマはやっぱり「流行りを作る」です、よろしくどうぞ。

1.はじめに

出来るだけフラットに書きたいとは思うのですが、僕はどちらかと言えば先生が部活の顧問をやることに賛成派の人間です。そんな奴が書いた文章だと思って読んでいただけると幸いです。

皆さんそれぞれの学校生活を振り返っていただくと、良い思い出にしろ悪い思い出にしろ、「学校生活の思い出」の中で部活動の占める割合は少なくないのではないかと思います。

僕自身も中~高ともに運動部に所属して部活漬けの日々を送っておりました。幸せなことに良い思い出が多く、今の自分の人格は部活を通して形作られた部分がかなりあるように感じています。

今でこそ国語教育の勉強をしていますが、高校に入ってしばらくは学校の先生が苦手、はっきり言ってしまえば嫌いでした。それが「教員になろう」とまで思うようになったのは部活の経験が大きいです。

2.部活動ってそもそも何なのか

学習指導要領の総則を見てみると、部活動について下のように書かれています。

教育課程外の学校教育活動と教育課程の関連が図られるように留意するものとする。特に,生徒の自主的,自発的な参加により行われる部活動については,スポーツや文化,科学等に親しませ,学習意欲の向上や責任感,連帯感の涵養等,学校教育が目指す資質・能力の育成に資するものであり,学校教育の一環として,教育課程との関連が図られるよう留意すること。その際,学校や地域の実態に応じ,地域の人々の協力,社会教育施設や社会教育関係団体等の各種団体との連携などの運営上の工夫を行い,持続可能な運営体制が整えられるようにするものとする。

と記載されています。このような効果が期待される一方で、「教育課程外」とあるように、中高の部活動は教育課程には含まれていません。教育課程に含まれていないということは、含まれている教科の学習であったり道徳や生徒会活動とは違い、極端な言い方をすればやらなくてもいい活動ということになります(仮に部活動が教育課程内であったなら「帰宅部」は認められず、全員何かしらには入らなければいけません)。教職教養を思い出しますね。

ざっくりまとめると部活動というのは「やるといいことがたくさんあるけど教育課程外だから、必ずやらなくてもいい。だけどやるなら学校教育の一環でやらなきゃならない」活動といった感じでしょうか。

ちなみに小学校のクラブ活動は教育課程内なのでみんなやらなきゃダメです。

3.部活動をめぐる諸問題

上記のような位置づけの部活動ですが、悪いほうで話題になることも多いです。いくつか紹介します。

1. 体罰

数年おきにメディアで大々的に扱われるような体罰が起こっています。例えば下のようなものとか。

桜宮高校体罰「自殺」事件 初公判で公開された“殴り続け”映像 (1/2) 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

事件になっていないよな軽い体罰は今でも全国色々なところで起こっているのではないでしょうか。

2. 顧問の労働時間

最近教員の労働時間が話題になることが増えてきたように思いますが、部活動(の顧問)はその問題の中心にあることが多いです。

3. (実質)強制加入

部活動は入らなくてもいいものであるはずなんですが、学校によっては全員何かしらの部に入らなければいけないところもあります。また、こんな決まりはない学校でも、周囲の目を気にしたり、入らないと友達が作りづらい等の理由で、「部活は基本みんなはいるもの」のような雰囲気がある学校もあります。僕の中学校は後者でした。

4. 部活を望む保護者

2.と少し重なる内容ではありますが、部活に入っていた方が入試や就職に有利(実際のところはわかりません)と考えていたり、家に子供がいると色々面倒と考えている保護者は少なからずいるようです。例えば「前の顧問のときは土日も部活があったのに今の顧問は休みにしてる!」みたいなことを言う保護者がいるかもしれません。

4.部活動指導員

あんまり話題になりませんが「部活動指導員」という制度が最近出来ました。

部活動指導員とは│教員でなくても部活の顧問にもなれる外部の指導者

これまでも顧問の他に「外部指導員」みたいな名前で部活の指導をしている人はいましたが、この部活動指導員は下のような違いがあります(上のリンク先から抜粋)。

 

  従来の外部指導者 部活動指導員
身分 法律上不明確 学校教育法が定める学校職員
役割 教員の顧問の技術的指導を補助。校外の引率は原則不可。 教員に代わり部活動の顧問ができる。校外の引率も可能
謝礼 無償、有償など自治体によってばらばら 有償
指導者研修 規定はばらばら 義務

 

 

高校とかにいた物理とか体育とかの授業だけを担当する、「非常勤講師の部活版」がイメージとしては近いでしょうか。

一見よさげな制度に見えるのですが、例えば下のような問題があります。

①部活中に事故があったとき、責任はだれがとるのか

②謝礼が大学生のバイトよりはマシ、といったくらい

③お金が発生することで学校や保護者から指導の効果を期待されないか

他にもありそうですが、この3つを併せて考えただけでも例えば「部活中生徒が怪我をしたら責任を負わされるかもしれず、大会で結果を出さないと文句が出そうな、時給2000円の仕事」なんてやってくれる人は多くない気がします。加えて1週間のなかで部活が行われる時間はまあ10~15時間くらいでしょうから、多くても週給約30000円ということになります。部活動指導員だけで生活するのは厳しいです。そうなるとメインターゲットになるのは退職した高齢者の方?人口の多い都市部は見つかるかもしれないけど、田舎でこんな条件をのんでくれる例えばハンドボールの指導者は見つかるでしょうか?

また、一応というか、大学で免許を取るために色々と勉強したはずの教員でさえ体罰を起こしたりしてるのに、ちょこっと研修を受けただけの指導員が大なり小なり問題を起こさないというのは考えにくいです。

5.地域クラブ等を盛んに

こんな提案もあります。

例えば、スポーツなり文化活動なり熱心に活動したい人は民間の地域クラブで専門的な指導を受け、週に2回とかで気軽にやりたい人は学校の部活で、といったような住み分けが出来ればいまあるような問題は解決できるかもしれません。

ただこれに関しても、地域格差や所得格差が問題になってくるように思います。

人口の多い都市部ならマイナーなスポーツ等でもクラブは設置できるでしょう。ですが、田舎ではクラブが運営できるだけの参加者が集まらないでしょうし、参加者が集まらなければお金も集まらずクラブは廃止せざるを得ません。民間ですからね。

家の近くにクラブがあったとしても、お金が払えなければ参加することは出来ないことが多いと思います。民間なので。

茨城県の田舎に生まれ、テニスがすごく好きだけど、近くにクラブはないから仕方なく学校の部活でテキトーにやる」人や「東京で生まれ、サックスがやりたいけど、近くのクラブは月謝が高いし、サックスは自分で買わなきゃならないから学校の部活でテキトーにやる」みたいな人が今よりも増えるかもしれません。

6.雑感

「部活動はこうすべきだ!」と確固たる意見があるわけではないので、ここまでを踏まえてだらだらと書きます。

部活の公共性

5.で書いたことに重なりますが、学校の部活のすごい所って誰でも、どこに住んでいても、学校の生徒であるだけで好きなことをする環境が提供されることだと思います。もちろん全てではありませんし、全くお金がかからないわけでもありませんが、多少なりとも指導が受けられて活動場所も設備も使うことが出来るのは、当たり前に感じていますがすごいことです。

 …教員の努力(犠牲)に上に成り立っている素晴らしさではありますが。

部活をやりたい教員

体育の先生だったり、野球部やサッカー部の顧問をしている先生は顧問をしたくて教員になった人も多いです。このことに関しては別に構わないと思う(僕もその口でしたし)のですが、「部活はやらなくてもいい活動なんだ」と理解しておくことは必要かと思います。

 

部活の教育効果を大きく考えすぎ?

「部活でしか指導できないことがある」みたいなことを言う人もいると思います。ですが具体的に考えてみると「先輩後輩との接し方」とか「継続性」とか、必ずしも部活でなきゃいけないものではない気がします。また、教育効果を教員が感じやすいというのもあるかもしれません。例えば国語の教員が生徒の論理的思考力を育てようと思っても、その効果ははっきりとはわかりません。それが部活なら目に見える形で上達が確認できますから教員としては嬉しいでしょう。

 

 

色々調べてみても、結局個人的には部活はあったほうがいいんじゃないかと思ってしまいます。厳密には教員が顧問をする部活です。

教員の労働時間が増える (しかも残業代はない)等問題があったとしても、生徒からすれば田舎で貧乏でも好きなことが出来る機会がもらえる場であり、教員からすれば恐らく生徒との最も密なコミュニケーションの場である部活が無くなってしまうのは、うまくいえませんが「痛手」な気がします。個人差はあると思いますが、授業だったりホームルームでの生徒と教員との関りは、部活のそれと比較すると機械的というか血の通わないというか…そんな風に感じてしまいます。まぁ、僕が先生とコミュニケーションとるのが下手だったというのは大いにあると思うのですが。ともかく、僕のような生徒は「他の先生には話したくないけど顧問の先生なら相談できる」みたいに考えることもあるでしょう。指導要領の「学校教育の一環として,教育課程との関連が図」ることにはこういうことも含まれる気がします。

世界的にみれば部活動がある国なんてほとんどありませんし、それが教育課程外だとしても、教員としても生徒としてもこの魅力を知ってしまった以上、なかなか無くそうとは思えません。

おわり

上手くまとまりませんでしたので後で追記するなどしようと思います。

部活が教員の負担にならないようなやり方を探して、良い面が残っていけばいいのですが…。

 

 参考

・学習指導要領

https://www.mext.go.jp/content/1413522_002.pdf