巧みなブログ

国語教育を勉強していた社会人一年目のブログ

早くビニール傘を使いたかった

幼少期の僕にとって、大人の象徴だったものが2つほどある。1つはボトルガムで、初めての給料でこれを買うと心に決めていた(大学1年の塾講師のバイト代で達成された)。残るひとつがビニール傘である。

 

全国大体そうだと思うのだが、僕が通った幼稚園や小学校の登下校の際には派手な黄色の傘を使うことになっていた。

男子はあれを振り回しつつ下校するため、傘の先端にたくさん傷が付いたり酷い時には折れてしまうこともある。学校の傘立てには、先っぽが折れたわんぱくな傘から新品でもないのに傷らしい数のないおとしやかな傘まで様々に立てかけられていた記憶がある。

こんな黄色い傘で楽しく登下校していた僕だったのだが、いつ頃からかこの傘を急に恥ずかしく思うようになった。細かくは覚えていないが、テレビに映る大人の男性はみんな透明な傘を使っていることに気付き、途端に自分の黄色が恥ずかしくなってしまった。

 

中学校に上がると黄色指定は無くなったのだが、透明な傘は使っていなかった気がする。母にコンビニの透明な傘が欲しいとお願いした記憶はあるので、母に止められたのだろうか。まぁ、急に息子がコンビニのビニール傘をねだってきたらちょっと不審に思うかもしれないし、今にして思えばすぐに壊れるコンビニのビニール傘をわざわざ買い与えはしないだろう。 

 

結局、初めてコンビニでビニール傘を買ったのは大学に入ってからだった。バイト代で服を買いに行こうとわざわざ遠出した日に急な雨に振られたのをよく覚えている。上で書いたような思い出はすっかり忘れていたのだが、レジでお金を払い、店先で傘を開いた瞬間に一気に記憶が蘇り、不意に大人になった気分になった。 

 

以来、何かしらの理由を付けてコンビニのビニール傘を買ってしまう。紺やカーキの傘をさすよりも、ビニール傘をさしている自分の方が大人な気がするから。期待通り?にビニール傘はあっという間に壊れるため残念ながら今は手元に1本もない。

 

小さい頃に思い描いていた「ビニール傘を使う大人な自分」にはなれた。まだあんまり欲しいとは思わないが、高機能だったりブランド物の傘が欲しくなり、それを使う頃にはもう一歩大人な自分になっているかもしれないと思う。そんな傘を手にする瞬間に、今書いているこのブログのことを思い出せたらいいな。