巧みなブログ

国語教育を勉強していた社会人一年目のブログ

慰安婦問題について考える(ナヌムの家の不正を取っ掛かりに)

(一気に書いたので読みづらいところ等あると思います。あとで修正・加筆するかも)

学部生のとき、従軍慰安婦問題について、タイトルにある「ナヌムの家」や韓国の大学、資料館等を訪問して大学の先生や学生、元慰安婦の方とお話しする機会をもらいました。

いつか書いておきたいなと思いつつ、デリケートな話題なのでなかなかブログにできずにいましたが、数日前にナヌムの家についての報道があったこと、時期的にも戦争関係の話題が多いこと、帰省していて時間があること等、ちょうどいいタイミングかもしれないと書き始めることにします。

できるだけフラットに、書き振りには注意しますが万が一不快に感じた方がいたら申し訳ありません。それでは。

 

「ナヌムの家」とは

www.nanum.org

www.konest.com

 

下のリンク先を見ていただくと写真付きで手っ取り早くどんな場所か分かるかと思います。元慰安婦の女性が共同生活をする福祉施設+資料館が併設されています。

 

ナヌムの家についての報道

あんまりテレビでは報道されていないような気がしますが、数日前に下のようなネットニュースが掲載されました。

 

news.livedoor.com

 

慰安婦の方のためにと寄付・支援されたお金を不正に流用したり、職員の入居者へ暴言があったとのことです。単に不正流用というだけでも十分悪いのですが、ナヌムの家のために使われたのはたった2.3%(大体2000万円くらい?)というのだからさらにびっくり。見方を変えればたった2.3%分で施設が運営できるということなのでいかに慰安婦ビジネスがお金になるかを見せつけられたように感じます。

 

韓国を訪れたときに感じたこと、考えたこと

ここからナヌムの家の話題を離れ、冒頭で書いた学部生のときの経験について、備忘録を兼ねて少し書いていきます。

慰安婦の女性(とその周辺の人たち)

韓国滞在中に元慰安婦の方と直接お話し(もちろん通訳越しですが)させていただきました。日本でも戦争経験の記憶・記録の継承が難しくなっていると(この時期は特に)話題になりますが、韓国の慰安婦問題に関しても全く同じことが言えます。当事者である元慰安婦の方々は当然高齢になっており、まだ存命で、かつ自身の経験について話すことが出来る状態の方はこの数年でどんどん減っているとのことです。

こういった状況にある元慰安婦の女性ですが、一枚岩ではありません。

日本のテレビの報道を何となく見ていると、元慰安婦の人たちは一致団結して自分たちの主張を述べているように見える(少なくとも僕は見えていました)のですが、実際はそんなことはありませんでした。

慰安婦のなかにも、心から自分の経験を正しく国内外に伝えたいと考えている人から、お金や待遇目的に活動している人まで様々とのことです。また本人にその意思はなくとも、お金が欲しい親族に利用されている(詳しくは忘れてしまったのですが、慰安婦であるというだけで国から支援金がもらえるのだとか)人もいるようです。

政治家が支持率回復のために慰安婦問題を利用しているという話もあります。お金のために国に都合の良い証言をする人もいるのかもしれません。さらに、もう間もなく証言できる人も、その証言が嘘か本当か判別できる人もいなくなります。

韓国の大学生

大学を訪問し、ソウルの大学生と意見交換もしました。印象的だったのは、ソウルの学生でさえ、程度の差はあれど少なくとも慰安婦問題については「日本が加害者であり韓国は被害者である」という意識が根強くあることが窺えたことでした。

誤解を招きそうなところなので丁寧に書きます。

まず、韓国の大学の分布についてです。日本は旧帝国大学のように全国各地に主要な大学が点在しているため、学生も各地に散らばっていきます。一方で韓国は主要な大学はほとんどソウルに集中しているとのことでした。ソウルでない大学に通っているから優秀でないという訳ではないのですが、ソウルにいる学生は他の地域と比べて賢い傾向にあるとは言えると思います。

そんな賢い学生なので、僕が話した人たちも慰安婦問題に限らず色々なことについて、感情論にならずに客観的に、冷静に考えることのできる人たちだったはずです。実際、冷静で建設的な議論が出来ていたと思います。それでも、僕は冷静な彼らの底にある「自分たちは被害者側だ」という意識を感じたように思います。その日の意見交換に参加してくれた学生は日本語学科の学生が多く、日本語が堪能で日本(と韓国の関係)に関心の強い学生だったこともあってか、底にある感情に触れやすかったのかもしれません。

韓国の受験戦争を勝ち抜いた、国内でトップクラスに優秀で、言い換えるならトップクラスに冷静で、かつ僕と同世代ですから戦争なんて随分遠くに感じる人たちからですら、上のようなことを感じるのだから、一般的な韓国人はより強く明らかに被害者意識を持っているんだろうとそのとき感じました。

恐らく、日本人にとっての原爆問題と近い感情なんだろうと思います。この時期は毎年テレビでも特番が放送されますし、教科書から、家族から、小さいころから刷り込まれます。日本人のほとんどは「日本人はアメリカに原爆を落とされた被害者である」とどこでだれに教わったか覚えていないけどいつの間にか考えるようになります。

他の色々な国でも、こんなに大きな問題でなくても加害者よりも被害者の側の方が記憶にも記録にも残りやすいものでしょうから、自然な現象ではあるにしても実際に目の当たりにすると驚くというか、再確認させられました。

韓国の高校

高校を訪問し、歴史の授業を見学させてもらいました。

僕は高校では理系のクラスにいたため、近現代史は中学校以来受けていないのですが、少なくとも中学校で慰安婦問題について詳しい説明を受けた記憶はありません。

対して、訪問した高校では年度や担当教員によって差はあるものの、数時間を慰安婦問題に充てるとのことでした。しかも座学メインでなく生徒同士のディスカッション等がメイン。

個人的にこのあたりを詳しく調べていたのですが、日本の現行の教科書(中学社会、高校世界史日本史)には慰安婦に関する記述は1ページあればいいほうで全く記述のないものもあります。記述のある教科書でも慰安婦に関連する語句は太字で示されていない(重要語句扱いでない)ため先生によってはスルーしてしまう人もいるかもしれません。(読んでくれている方へ。もしよければコメント等で自身の受けた授業はこんなものだったと教えていただきたいです。)

他にも、日韓で学ぶ機会に差ができつつあります。

 

www.wowkorea.jp

 

日本でいうセンター試験の制度が最近変更になりました。これまでは「韓国史」の科目は必修ではないうえに、他と比較して得点が取りづらい科目だったらしく、高校生全体の履修率は数%程度だったそうなのですが、制度の変更により韓国史が必修になりました。韓国の、少なくとも大学受験を目指す生徒は全員が韓国史を履修することになります。教科書の内容が変わらなければ、「得点が取りづらい」韓国史は時間をかけて勉強することになるでしょう。目的が大学受験だったとしても、結果的には今までより多くの生徒が慰安婦問題についても勉強することになるかと思います。

韓国の教科書は、被害者の合計人数など「ホントか?」と疑いの余地がありそうな記述もあります。日本の教科書が「100%事実であるといえること以外は記載しない」というスタンスをとっているとしたらそれはそれで良いことだとは思います。それでも、今まさに日韓で問題になっている内容についてほとんど触れないというのはよくないんじゃないか。最低限の基礎知識ですらここまで日韓で学ぶ機会に差があると、メディアの報道にいいように踊らされてしまうのではないか、不安になります。

まとめ
  • 慰安婦被害の当事者は間もなく誰もいなくなる。
  • 残った親族はお金のために嘘を言うかもしれない。
  • 韓国人には当然被害者としての意識が残っている(日本人に加害者としての意識は薄い)。
  • 韓国の子どもは問題について学ぶ機会が増えてきている一方で、日本の子どもは学ぶ機会がほとんどない。

問題の解決は遠い先の話に思えます。しかし、先に延ばせば延ばすほど解決が難しくなるのではないか。

おわり

少しかじった程度の知識しかないため、最後にカッコいいことも言えはしないのですがもう少しだけ。

この記事だけを読むと韓国人に良くない印象を持ってしまうかもしれませんが、全くそんなことはありません。学生をはじめとして、他愛ない話をしているときは友好的で親しみやすい方が多かったです。だからこそ、いつまでもお互いの根底に慰安婦問題が残り続けていくのは悲しいなと思います。

社会ではないにしても教員になる以上、せっかくの経験を大事に自分の中でいろいろと考えようと思います。